記事更新日:
2019.04.11
ライター情報:
長門市観光コンベンション協会
童謡詩人・金子みすゞの誕生日、4月11日。
平成15年の同日に開館した仙崎の「金子みすゞ記念館」は、開館16周年を迎えました。
この日は、みすゞの遺稿集となる3冊の手帳の現物が公開されました。
これらは、みすゞの実の弟である上山雅輔さんから、現・金子みすゞ記念館長の矢崎節夫氏に託されたもの。その劣化状況から同館での展示は難しいと考えられていましたが、新たなキャビネットの導入により、このたび実現させることができたそうです。
手帳には、すべてみすゞ本人の手書きで512編の作品が収められています。
1冊目は「美しい町」、2冊目は「空のかあさま」と題名がつけられ、「大漁」や「星とたんぽぽ」をはじめ、今ではなじみ深い作品が多数収められています。
この2冊は清書されたもので、現在では開くことすら難しいものの、無地の紙に縦書きできれいな文字が並んでいます。
3冊目の「さみしい王女」は文字を修正した跡も見られ、本当の原本といえる1冊。「私と小鳥と鈴と」や「こだまでしょうか」の詩が収められています。
筆圧も清書された2冊とは異なり、裏移りしている箇所もあるそう。中には「×」や「△」の印がつけられた詩も40編程度見られ、それらはもしかすると、この手帳がなければ世に出ることはなかったのかもしれません。
館内には地元・仙崎小学校の児童や地域の皆さんをはじめ、新聞やラジオで情報を得て飛んで来たというファンの方も。この日は開館時間を延長し、19時までの開館となりましたが、最後の最後まで「目に焼きつけたい」と手帳を見つめる方も見られました。
多数の報道陣を前に、矢崎節夫館長は「1982年に初めて手にした3冊の手帳を通して、実際にみすゞさんの手で書かれた512編の詩の重みを感じてほしい。どんな世代の方にも深く読んでいただけるみすゞさんの詩は、ぜひ声に出して読んで、同じ呼吸を感じてもらいたい」と答えました。
同館では、手帳をもとにしたポストカードも販売中。
手帳にまつわるさまざまなストーリーを聞くと、これまで以上に文字の重みと奥深さが感じられました。
毎年、4月11日からは記念入館券が配布されています。
「No.1」の入館券を手に入れようと、開館前から記念館に足を運ばれる方も見られました。
本にはさむ「しおり」としても使用できるこの入館券。今回は「見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。」のフレーズで知られる、「星とたんぽぽ」の詩が描かれました。
入館券を手に順路を進むと、子どもたちの声が聞こえてきます。
みすゞ保育園に通う園児たちが、みすゞの詩を歌うミニコンサートです。
元気あふれる子どもたちの歌声に、来館者も思わず笑顔を浮かべていました。
同館2階では、当日限定のワークショップも開催。
みすゞ直筆の詩のポストカードを額に入れ、お花で飾るワークショップです。
講師は、「花デザイン由樹」を主宰する市内のフラワーデザイナー・末永有紀さん。
「同じ材料を使っても、みんな違う作品に仕上がっていく。それもお花の楽しみの1つです」と話し、和やかな雰囲気の中で制作が始まりました。
まずは、材料を選ぶところから。
ポストカードと額、そしてお花を、完成図を想像しながら手に取ります。
お花で華やかに彩られた、みすゞの詩。
この地ならではの、素敵なインテリアに仕上がりました。
今年の4月11日は、例年以上の来館者があったそう。
たくさんの人の心の中で、みすゞさんの存在が大きくなった1日となりました。
同館では、将来的には毎年4月11日に手帳を展示したいとのこと。記念館の出口に巣を作り、毎年帰ってくるツバメのように、またこの場所で出会えたらうれしく思います。