記事更新日:
2018.12.06
ライター情報:
長門市観光コンベンション協会
9月15日(土)〜17日(月)の3日間、観光まちづくりが進む長門湯本温泉で、さまざまな飲食店やワークショップが集うイベント「おとずれリバーフェスタ2018」が開催されました。3回に分けてお送りするイベントレポートでは、社会実験のテーマである「川」「道」「夜」の話題を中心に振り返ってきました。
最終回となる今回は「未来」がテーマ。イベント期間中に行われた、長門湯本のまちづくりを考えるトークイベントや、伝統ある「萩焼深川窯」を未来へつなぐ取組にスポットを当てました。
vol.1「川」で憩う・「道」で出会う
vol.2「夜」に集う・「橋」で味わう
vol.3「未来」を語る【本記事】
「おとずれリバーフェスタ2018」3日目。大寧寺の書院には、にぎやかな声が響いていました。
この日開催されたのは、地域の内外から大寧寺に集った皆さんが、トークを通じて長門湯本の魅力を再発見する試み「サロンde大寧寺」。昨年、全国の大学生や先生が長門湯本温泉に集った合宿ワークショップ「地域観光プランニングカレッジ」の中で、まちづくりを進める1つのアイデアとして提案された取組です。
今年4月の開催に続き2回目となる今回は「長門湯本のみらいを考える〜観光まちづくり研の事例研究から〜」がテーマ。首都大学東京の川原晋先生が進行役を務め、同大学の10年にわたる観光まちづくり研究の中から、学生の口で貴重な事例を紹介します。
この日まず紹介されたのは、外国人と作業と宿泊・食事を交換する仕組み「WWOOF(ウーフ)」を活用して、地域活動に外国人のスキルを生かした事例や、外国人旅行者の期待と地域・店舗の対応のマッチングを研究した事例など。今後増加が期待される外国人観光客と、長門湯本温泉との関わりについて考えるきっかけとなりました。
また、大規模イベントの開催をその後の地域活性に生かす「イベントレガシー」の事例として、「全国都市緑化フェア(山口県では今年「山口ゆめ花博」の愛称で開催)」が過去にもたらした地域への効果などが紹介されました。
こうした事例で話題を提供した後は、フリートークがスタート。
まちの未来を思う地域の皆さんと、外からの視点で新鮮なアイデアを提案する学生、そして専門家である長門湯本温泉観光まちづくりデザイン会議のメンバーの皆さんが、それぞれの立場で思いを語ります。
参加者の皆さんは真剣な表情を浮かべながらも、終始和やかな雰囲気だった今回の「サロンde大寧寺」は、あっという間に予定の時間を迎えます。
最後は学生の皆さんに拍手が送られ、主催者の1人である湯本地区の若手・赤川祐太さんの言葉で締めくくられました。
大寧寺を後にした参加者は、「おとずれリバーフェスタ」開催中の温泉街へと歩いていきます。
まちの景色を眺めながら、長門湯本ではどんなことができるだろうかと、つい考えてしまいます。参加者が互いにとって良い刺激となった、充実の2時間でした。
温泉街の一角には、長門湯本温泉の未来予想図を紹介するブースも設置されました。
恩湯周辺や星野リゾート進出予定地では、イベント開催中も工事が進んでいます。ふと外に出て温泉街を見渡せば、「あの場所がこんな風になるんだ」とワクワクさせてくれました。
「紅葉の階段」や「雁木広場」はすでに形となり、少しずつ未来に近づいていく温泉街。
変わりゆくまちを目の当たりにして、「また次に訪れるときが楽しみ」と期待に胸を膨らませる声も聞こえました。
360年以上前、萩藩の御用窯として生まれた萩焼深川窯。
「おとずれリバーフェスタ」に合わせて、萩焼のギャラリーを併設したカフェ「cafe&pottery音」では、萩焼深川窯青年部の皆さんによる「豆皿制作体験」が行われました。
萩焼の伝統を受け継ぐ青年部の皆さんから、直接手順やコツを教わることのできるまたとない機会。参加された皆さんは、真剣な表情で土と向き合います。
土を型に合わせて切り抜いたり、形を整えたりすることで、次第に器らしい見た目に。思い思いの形を作り、そして模様を描いていけば、世界に1つの豆皿が完成します。
続いて挑戦するのは、会場に遊びに来た子どもたち。
「次はどうするの?」「この道具はどう使うの?」青年部の皆さんは、1つ1つの質問に丁寧に答えながら一緒に作り上げていきました。
旅先で体験した印象的な思い出は、深く心に刻まれるもの。イベント翌月、焼き上がった豆皿は参加者の手元に届けられ、この地に残る大事な文化に親しみを持ってもらえたはずです。
長門湯本温泉の川・道・夜の未来を体感した3日間も、いよいよ終わりのときが近づいてきました。
夕日に染まる川床の周りには、まちづくりに携わるメンバーを中心に約40人が集います。
フィナーレを飾るのは、自分のスタイルでまちを面白くする人の話を聞く「ながトーク」。昨年3月に始まり、今回で7回目を数えるトークイベントです。
今回のゲストスピーカーは、福岡県久留米市を中心に、コミュニティーカフェの企画運営・イベント企画運営を行う、まちびと会社visionAreal(ビジョナリアル)の おきな まさひと さん。
聞き手は、自身も昨年5月に「ながトーク」のゲストを務めたことのある、長門湯本温泉観光まちづくりデザイン会議の司令塔・泉英明さんです。
おきなさんは、自分が選んだ場所で、好きなことを軸に活動し、好きな人と暮らす人たちを「まちびと」と呼んでいます。
久留米のまちで代々続く中華料理店の家に生まれ、独立して飲食店を開業。店内でイベントを打ち出していく中で、次第に輪や規模が広がり、活動の舞台が店の中から「まち」へと移ったのが転機。今では「まちと、ひとを、事でつなぐ」をコンセプトに、さまざまなプロジェクトに携わるようになったといいます。
やわらかく軽妙な語り口に、時折響く笑い声。
川床のステージでおきなさんの語る世界に、誰もが引き込まれていきます。
自分たちがやりたいことを、自分のまちを拠点にして実現する。そんな「自分サイズ」のプロジェクトを完結させる「まちびと」が集うことで、きっとまちは良い方向に向かっていく。おきなさんの「ながトーク」には、シンプルながらも、胸に響くワードがたくさん散りばめられていました。
そして気がつけば日が沈み、19時。こうして、未来を体感する特別な3日間は終わりのときを迎えます。
「自分たちも『まちびと』になれるように」、あたたかい照明に照らされた川のほとりには、未来を思う皆さんの強い気持ちが漂っていました。
「ながトーク」vol.08となる次回の開催は、12月8日(土)18:30から。ゲストスピーカーは、萩焼深川窯の陶芸家、田原崇雄さんです。
今年11月にフランスのリヨンにて開催された「田原陶兵衛家の萩焼と茶の湯」に出席し、萩焼深川窯の紹介や、茶道のデモンストレーション・講義を行った田原さん。フランスでの開催の模様や、深川萩焼と茶道の深い関わり、ご自身の作品づくりについての想いなどが語られます。
会場となる「cafe&pottery音」では、同日から酒器や豆皿、小鉢などが並ぶ「てのひらの景色’18」展がスタート。萩焼深川窯の作家に加え、県外の作家3人を交えた作品をお楽しみいただけます。
貴重なトークと作品に触れることで、より一層、萩焼深川窯を身近に感じていただけるこの機会。
長門湯本の誇る大事な文化「深川萩焼」の魅力を、ぜひ一度味わっていただければ幸いです。
ゲストスピーカー:田原崇雄さん(深川萩焼 陶芸家)
日時:2018年12月8日(土)18:30〜
会場:cafe&pottery音(山口県長門市深川湯本1261-12)
参加費:1000円(ワンドリンク付き)
ながトークvol.08 with 田原崇雄さん(長門湯本みらいプロジェクト)
会期:2018年12月8日(土)〜24日(祝)
会場:cafe&pottery音(山口県長門市深川湯本1261-12)
営業時間:11:00〜17:30(イベント時は変更あり)
定休日:毎週火・水曜日(イベント時は変更あり)
てのひらの景色’18(長門湯本みらいプロジェクト)